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メイキングストーリー・オブ・ビーツァ 第一章 ~ビーツァ開発前夜
お陰様でこの5月を持ちましてビーツァMシリーズの3機種(フラットサイドタイプ)の製作をすべて無事に完了致しました。 気まぐれな製作者のことなので、次に何時Mシリーズを製作するかは未定ですが、この場を借りて皆様に心よりお礼申し上げます。 ボチボチ全機種が店頭に並んでいる頃かと思いますので、ぜひ一度手にとって見てみて下さいね。
それにしても驚いたのは、プロモーションらしい事を殆ど何もしていないにも関わらず、ビーツァはこの半年程の間に日本各地の、そしてアメリカのコアなアングラー達にしっかりと受け入れられた事です。 日本の野池からアメリカのビッグレイクまで・・・・・ビーツァはアメリカのトップカテゴリーのトーナメントでも数名のプロ達のシークレットベイトとして使われ続けています。こんなアンダーグラウンドなハンドメイドビルダーにとっては全く想像すらしていなかった事で、未だもって信じられないような話ですが、今年、すでにバスマスタークラシックを含めたBASS系のトーナメントで数度のトップ10カットに貢献しています。
”魂のビーツァ”・・・と表現する人がいます。 ”異常なぐらい釣れる!”・・・と表現する人もいます。 ”このフォルムと、こんな小さなリップで、なんでこんなに泳ぐの?”・・・と不思議がられる人もいます。 ”もっとデカイサイズが欲しい、ファットタイプも欲しい!”・・・等々、色々なご要望を頂きます。 ”使いすぎて壊れた!”・・・とお叱りを頂く事もあります。 どれもこれも製作者にとっては本当にありがたいお言葉です。 そのビーツァがどうやって、そしてどのようなプロセスを経て誕生したか、悲喜こもごもの誕生秘話を何回かに分けてご紹介させて頂きたいと思います。 題して「メイキングストーリー・オブ・ビーツァ」 かなりオタク系なネタになりそうなので、興味が無い方にとってはどうでも良いような話になってしまう可能性は大ですが、少しでもビーツァのバックグラウンドを知って頂きたいという思いに至り、公表に踏み切る事にしました。 しかしながら、実は「メイキングストーリー」などではなく、単なる失敗談のオンパレードになってしまう可能性は大!!(笑) そんなしょうも無いお話にご興味頂ける奇特な方はあまり多くないかもしれませんが、お暇な方はぜひお付き合い下さいねっ!! それでは始まり始まり・・・・・・
硬質発泡ウレタンとの出会いの巻
当時、シマノ社のデッドリースパイラルを開発していたある日の事・・・・・。 ベンディングボディーに2重構造、しかもソフトテイル・・・・・と、デッドリースパイラルの構造は開発が進むごとに複雑化し、もはやウッド素材でのプロトモデルの作製は不可能なレベルまで開発が進行していました。 いや、正確に言えば一個のプロトモデルという事であればウッドでも製作可能なのですが、たった一個のプロトモデルではテストすら出来ず全くお話になりません。 “こりゃあ何とかせんとっ!”と始めたのがウッド素材に変わる素材の研究でした。
ウッドのような浮力を持ち、シリコンモールドで成型が可能なもの・・・・・・しかし、どんな素材が適しているのか全く情報も無く、ましてやそれまでウッド一筋のウッドバカの僕にとってはそんな知識すら全く無く、まずは素材屋さんに行っては何か良い材料は無いか聞き、使えそうなものがあれば片っ端から試してみました。 しかし、浮力が弱かったり、強度が足りなかったり、根本的に成型すらできなかったりと、なかなか使えそうな材料は見つかりません。
そんな中、とあるホームセンターを歩いていると、ふと目に留まるものがありました。断熱材のコーナーで色々な断熱材が展示されていたのですが、その中の一つに、コップの中に樹脂が固められてサンプル展示されていたのです。 “これは気になる!!” 僕ははやる気持ちを抑え、早速サンプルを手にとってみると、これがまた軽いじゃないですかっ!!
そして改めて紙コップをマジマジと見てみると「ポリウレタンフォーム」と書いてあります。 “へぇ~、ポリウレタンフォームって言うんだぁ・・・” 急速に興味を惹かれ、展示サンプルをイジクリ倒してみました。樹脂表面に爪を立ててみたり、親指で強く押してヘコミ具合を試してみたり、挙句の果てには持っていたペンを突き刺してみたり・・・・・今考えればさぞかし怪しい東洋人だった事でしょう。。。
そして、その他に展示されているサンプルも見てみると、どうもそのポリウレタンフォームにも色々な種類があるようで、更に大興奮!! 軽いタイプや重いタイプ、硬いタイプやスポンジのように柔らかいタイプまで、色々あります。 どれがルアーに向いているものやら、またシリコンモールドで成型できるかどうかすら見当もつきませんでしたが、後先考えず、なけなしのお金をはたいて何種類かの「ポリウレタンフォーム」を購入し家路につきました。
工房に帰るやいなや、テスト開始。 辞書を引きながら英語の説明書を読むと、どうもA液とB液をまぜこぜすると化学反応を起して発泡する模様です。 早速A液とB液をまぜこぜし、モールドに流し込むと、むく・むく・むくと見る間にウレタンフォームが発泡していきます。 “わぁお!!” もう大興奮です!!(笑)
そして固まるのを待つ事しばし・・・・・・はやる気持ちを抑えてモールドから取り出すと、見事なまでにルアーが成型できているではありませんかっ! しかも恐ろしいぐらいに細かい所まで再現できています。 “これは使えるっ!” ビーツァ開発の原点になったもの、それはまさにこの硬質発泡ウレタンとの出会いがすべてと言って良いと思います。
その日からは発泡ウレタンの研究の日々・・・・・毎日、朝から晩までA液とB液をまぜこぜし、気が遠くなるほどのデータ取りをして体に発泡ウレタンの特性を叩き込んでいきました。
その後、製品化する為にどれだけ大変な思いをするかなどツユ知らず、毎日まぜこぜしては喜ぶ、おバカなルアービルダーだったのでした。
N-FOAM誕生!!の巻 様々な条件下で発泡ウレタンを成型し、なんとなく素材の特性が分かって来るにつれて、ある恐ろしい事実が浮き彫りになってきました。 その事実とは、「成型品の重量が一定にならないこと・・・・」、成型品の重量を計測してみると、重たいものと軽いものとで最大1グラムほども誤差があります。 これでは全く話にならないというか、重量がコンマ何グラム変わっただけで動きが変わるルアーにとっては絶望的な数字で、製品化など到底無理な話です。
さて、どうするか・・・・・原因を探ってみると、どうもそれは成型環境の温度や湿度に関係しているようでした。 特に温度。発泡ウレタンは温度によって発泡度が大きく変わる特質を持ち、室温、モールドの温度、A液とB液の液温等がほんのコンマ数℃違うだけで、成型品の重量がまるで違ってくるのです。 これにはホトホト困りはてました。 何故なら、当時の僕の工房は本当にその名の通りのガレージファクトリーで、築40年近いガレージを改造して工房にしていた為、雨漏りはじゃんじゃんするわ、隙間風だらけだわ、夏は30度以上になるわ、冬は所有しているヒーター全てを入れても最高室温4度までしか上がらないわで、温度管理など到底不可能に近かったのです。 ホント冗談ではなく、雨が降れば工房内で傘をささなければならないほど雨漏りがひどく(本当に何度か傘をさしたことがあります。笑)、あまりの湿気で機械は錆びるわ、壁からキノコが生えてくるわで、温度管理以上に湿度管理は不可能!本当に冗談のような工房だったのです。
自分の事であれば、熱くても寒くても雨漏りしてもガマンできます。でも発泡ウレタンはそうはいきません。 「今日は寒いから頑張って発泡してくれよ!」ってどんなにお願いしても発泡しないものは発泡しません。(泣) しかし、毎日の生活だけでもカツカツな自分には、工房を改造する為の余力もお金も全くありません。もちろんですが、そんな僕に銀行がお金を貸してくれるはずもありません。 僕に残された唯一の選択といえば、無い知恵を絞り、今の自分に与えられた環境の中で工夫し、最大限の努力をすることだけです。
色々考えた結果、ダンボール箱を保温庫用に改造して中に白熱灯を入れ、その白熱灯の熱でA液とB液を保温するようにしました。そして、温度管理が一番難しい成型時のモールドの温度調整は、ホットプレート(焼肉やホットケーキを作るときに使うアレです)を使って微調整するようにしました。 更にホットプレートでもプレート表面の温度の上がり方にバラつきがある為、温度分布を調べ、なるべく均等に温度が上がるようにモールドの置き方を工夫しました。この方法だと、モールド温度が上がるも下がるもあっという間なので、自分が望むモールド温度になるのは一瞬ですが、その一瞬を逃さず発泡ウレタンを流し込めば、それなりに安定し、気温4度の時でも誤差0.5グラム以内に収まるようになりました。 湿度に関しては、もうどうしようもないので無視! 0.5グラムという誤差はプラスチック製品と比べればまだまだ大きな数字ですが、それでもウッドよりは遥かに均一なレベルです。 成型方法については、最終目標を誤差0.3グラム以内に収める事を目標にし、今度は素材自体の改良に取り掛かりました。
もちろん、買ってきた発泡ウレタンそのままでもルアー素材には充分なりえるのですが、唯一気に掛かったのが、その気泡の大きさでした。 硬化後の成型品をカットしてみると一粒一粒の気泡が視認できるぐらいのサイズで、これが発泡を安定させていない要因の一つではないかと感じました。 またその気泡のデカさから、フック傷やぶつけ傷などからの水の浸入も心配です。 そこで考えたのが、この気泡をもっと蜜で細かいモノにしてやることは出来ないかということ・・・・・・そうすれば発泡がもっともっと安定し、かつダメージに強いものになるのではないかと考えました。 そこで、色々なモノを混ぜてみることに・・・・・・液体プラスチックから、種類の違う発泡ウレタンから、それこそ思いつくままにありとあらゆるモノを発泡ウレタンに混ぜ込みます。もちろん科学的な知識などゼロなので、全てが勘!。そして、当然の結末ではありますがその99%は失敗です。(笑) モールドの中で固まらずモールドをダメにしてしまったり、一見固まっているように見えても中身はグスグスだったり、すっごく良い感じで固まったと思ってもしばらく放置しているとシワシワ~と収縮したり。逆に膨張したり・・・・ホント、失敗のオンパレードとはまさにこの事です。(笑)
そんな中で、発泡ウレタンにあるパウダーを混ぜると非常に均一で密な気泡が出来るということが分かりました。 そして、A液とB液の混合比を変えてやることで、ある程度、発泡度をコントロール出来ることもわかりました。 この特性を上手く使えば、温度に合わせてA液とB液の混合比を調節し、成型品の重量を均一化することが可能になります。 そして、早速その研究に入ることに・・・・温度と混合比の関係、強度は確保できるか等々、研究課題は山積みです。 例によって膨大なデータ取りをしながら温度と混合比の相関関係を調べていくと、ある一つの法則が見えてきました。 一番重要なのはモールドの温度で、成型時のモールド温度をある温度に設定してやれば、その上下0.5℃ずつの誤差があってもA液とB液の配合比で重量調節ができ、その範囲内であれば強度も確保できるというものでした。 上下の温度許容範囲0.5℃ずつ、トータルでわずか1℃程の温度許容範囲ですが、それまでは0.1℃単位で、本当にピンスポットで温度合わせをしなければならなかった事から比べれば遥かにラクです。これで成型時の温度合わせに掛かっていた時間が一気に短縮し、成型の能率が向上しました。 失敗の中で偶然に見つけた事ですが、まさにヒョウタンから出たコマ!・・・・・何事もやってみるものです。
そして、完成した素材の比重を計測してみるとなんと0.05以下! これはバルサ材でも相当軽い部位に匹敵する比重です。これにはかなり納得がいきました。
お次は表面にワザと傷を付けて水中に放置・・・・・素材が水を吸わないかどうかのテストです。 もしこれでコンマ0.1グラムでも重くなれば素材が水を吸ったと言うこと。 もし水を吸ってしまうのであればルアー素材としては使えず、今までの努力は一貫の終わりです。 一昼夜水中に放置した素材を祈る気持ちでデジタルスケールの上に乗せると・・・・・・・なんと、ビタ0.1グラムの変化もありません!!
“やったっ!水吸っとらん!いけるかもっ!!”
遂に「N-FOAM」が誕生した瞬間です。 自分の名前の頭文字を取っただけの実にベタな名前ですが、まぁ、それはカンベンしてください。(笑) (現在は更に進化させたN-FOAM Ⅱを開発中です。)
そして、この素材を手にした瞬間、僕の頭にひらめいたものがありました。 “そうだっ!クランクベイトを作ろうっ!” 何故クランクベイトだったのか未だに自分でも良く分かりませんが、その瞬間にクランクベイトに取り憑かれたのでありました。(笑)
いよいよ、ビーツァプロジェクトの発進です。
・・・・・・つづく
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見た感じはどうも発泡素材のようで、これはもしかしてルアーに使えるんでないか?と直感しました。